仙台家庭裁判所 昭和63年(少)472号 決定 1988年3月03日
少年 T・O子(昭45.7.8生)
主文
少年を中等少年院に送致する。
理由
(非行事実)
司法警察員作成の昭和63年1月21日少年事件送致書及び同月28日付追送致書記載のとおりであるからこれを引用する。
(適用法令)
刑法235条
(処遇の理由)
1 少年は幼少時から仙台の養護施設で成育したが、中学3年の12月に施設を飛び出し、実父とその内妻とともに東京で生活するようになつて、都立高校に進学した。しかし、やがて関係を解消した内妻を追つて実父が仙台に転居したにもかかわらず、その後もひとり東京にとどまつてアルバイトなどで生活を続けていたところ、半年後には妻子ある20歳の男性と知り合つてまもなく同棲を始め、仙台に来るようにという上記内妻の勧めも断つて、男性との生活を続け、友人宅やホテルを泊り歩くうち生活費に窮して本件の非行を重ねるに至つた。
2 少年については、概ね中の上程度の知能は有するものの、劣等感とともに自己顕示性が強いうえ、協調性に乏しく、更に、被害感や周囲の人に対する不信感も強いため円滑な対人関係を作ることが困難で、社会に適応しにくいなどの問題点を指摘することができる。
3 暴力団員である少年の父親は監護能力に欠け、内妻、実弟、父方の実家のほかかつて少年のいた施設のいずれもがその受入れに対して拒否的であつて、少年の監護について期待することはできず、ほかに利用しうる社会資源は見当らない。
以上の点のほか本件非行に至るまでの生活態度や本件非行の内容など審判に現われた諸事情を総合すると、少年の要保護性は顕著であるというべきであり、社会内処遇により少年を改善更生させ得る状況とは認め難い。したがつて、少年の健全な保護育成のためには少年に対し施設収容による矯正の途を選択し、規範意識を養わせるとともに、自己の問題点の改善に積極的に取り組むようにし、更に今後の自立への方向づけを与えることが是非とも必要であると認められるので、少年を中等少年院に送致することとする。
なお、少年の非行性は現時点ではさほど進んでいるとはみられないことを考慮して、少年には別途一般短期処遇の勧告をし、あわせて少年の仮退院後の生活の場を確保できるように環境調整の措置をとることとし、今後の少年の更生を期待したい。
よつて、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項を適用して、主文のとおり決定する。
(裁判官 小川秀樹)
〔参考1〕環境調整命令
少年の環境調整に関する件
少年 T・O子昭和45年7月8日生
本籍 仙台市○○丁××番地
住居 不定
上記少年は、別添決定書謄本により、昭和63年3月3日当庁において中等少年院送致(一般短期処遇)の決定の言渡を受けた者ですが、少年の更生をはかるためには、下記のとおりの措置をとることが必要であると思料しますので、少年法24条2項、少年審判規則39条に基づいて要請します。
記
仙台保護観察所長は、環境調整の措置として、少年が仮退院した後、仙台等少年の希望する地域で受入先や就職先を見い出せるように尽力されたい。
仙台保護観察所長 殿
昭和63年3月3日
仙台家庭裁判所
裁判官 小川秀樹
〔参考2〕環境調整の措置に関する報告書
仙保観(観)第532号
昭和63年5月16日
仙台家庭裁判所 裁判官 殿
仙台保護観察所長 ○○
少年法第24条第2項に基づく環境調整の措置について(報告)
下記の者について、環境調整を実施した状況を別添環境調整(追)報告書(甲)写しをもつて報告します。
記
氏名 T・O子(昭和45年7月8日生)
決定日 昭和63年3月3日
(別添)<省略>